光と風とちょっとした遊び心
出会いと偶然のもたらす共同作業の空間作りでは、自分の意識のうえでフリーな気持ちを保つことが大事だと思っている。
造形上のスタンディングポイントをフリーに保つためには、何らかの判断の原点が要る。
私の場合、この空間思の考原点は「光と風とちょっとした遊び心」である。
建築はもともと洞窟などからはじまり柱や壁に屋根をかけるに至るまで基本的には囲み覆うことによって雨、風を防ぎ、暑さや寒さを和らげるなどの目的で生まれたわけである。
建築はその囲み覆った空間に如何に、あるいはどこまで「光」や「風」を取り入れるか、遮蔽するかのせめぎ合いであるとも言える。
覆われた空間の中での
「光」は空間にパースペクティヴ効果と陰影によるヒエラルキーをつくりだし、「風」は空間に開放感や動きと心地よさを与える。反対に光や風を遮蔽していくことによって静寂や均一さを得ることもできる。
一方、「遊び心」は空間を、人間味のあるものにぐっと近づけてくれるもう一つの大切な要素である。
アルタミラの洞窟の時代から、人は建築空間に、いろいろなかたちや方法によって「、このちょっとした「遊び心」を施してきた。「ちょっとした遊び心」は空間にうるおいと心和む親近感をもたらしたり、驚きや意外性を含めて空間と人とのあいだにコミュニケーションを与えてくれる。
言いかえると「光」「風」「ちょっとした遊び心」は空間に生命の息吹をもたらしてくれといえる。
依頼主の夢には多くの要望や必要条件があり、時には相反する内容を内在していることも多い。
そんなとき、話の中から顕在するものと内在するものを整理したうえで、光は?風は?と見ていきながら空間に視覚的なゆとりや、ちょっとした遊び心の視点を加えることにで、私たちの頭も活性化し、依頼主の中でも要望が再序列化されて、夢の中核に近づくヒントになることが多い。
このようなかたちで夢の実現に近づければこんな楽しい事は無い。
いつも心がけているのは「仕事をする以上、私も所員も依頼主も施工者も楽しくなければ」ということである。楽しければ、苦労もまた楽しいものである。せっかくの出会いなのだからなおさらである。皆を楽しませるような「遊び心」が見つけられれば最高である。
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