南の島のプールできたよ
遊園地や屋内プールなどたくさんの遊ぎ施設がありますが、あなたは何が好きですか?
遊びにいったとき、楽しければ「また来よう」と思いますよね。お客さんにそう思ってもらおう、と施設を設計する人たちがいます。きょうはその方々のお仕事を拝見しましょう。
”波”をおこそう
神奈川県横浜市鶴見に1992年にできた屋内プール「ワイルドブルー ヨコハマ」を設計した「空間設計」のみなさんに設計の苦労話などをお聞きしました。
88年に「波がおきるプールをつくりたい」という話がきました。「空間設計」では先ず、その場所にプールをつくったときに果たしてお客さんが来るかどうか、の調査をしました。
及川政志社長(53)を中心に調査をくりかえしゴーサインがでたのちに、及川社長や建築士たちが現地で地形、地質や人の流れなどをくわしく調べました。
いくらかけ、どのくらい大きな建物にするのか、などを詰め、いつまでに完成させるのか、法規や安全基準に合っているかどうか、も確認しました。
伝説ヒントにイメージづくり
いよいよプールのイメージづくりです。
「どんなプールにしようか」と何度も話し合っているときに、ある人が「南太平洋の島に”伝説のラストウエーブ”という話がある。大きな波がくるので大変だ、という昔話を信じた島の人たちは逃げてみな無事だったが、島を荒らしに来た海賊はみんな波にさらわれて死んでしまった、という話だ。この伝説をプールに再現してみないか」と言いました。
みんなも賛成してこのアイデアで設計を進めることにしました。何度もスケッチをかいて、イメージをつくっていきました。
プールの形は海岸線のような扇型にして、まわりは南の島にありそうな家や岩などをおきました。大波で難破した海賊船をプールのわきにおいて、より南の島らしさを出します。イメージの模型を何度もつくり細かい部分まで確かめます。 今度は設計図づくりです。
平面図、断面図、立面図で全てを表すのが設計図です。
お客さんに快適に過ごしてもらうために冷暖房をどこにつけるかや、調理場、トイレの水をどう流すか、電気のスイッチや配線をどうするか−などを次々と図面にします。CADという技術でコンピューターで線は簡単にひけますが、線を引くまでが大変です。
設計図が仕上がると、役所で建築許可などをとり、実際に工事をする建築会社を決めます。
そして工事がスタートしました。みんなは工事の最中も建築現場に行き、設計図どおりに進んでいるかチェックします。
工事が終わると仕上がりの確認をして施主(注文した人)にひき渡し、ずっと続いてきた、いろいろな仕事が終わります。
「ワイルドブルー ヨコハマ」はたのまれてから完成するまで、約4年かかりました。
いろんな専門家のチームワーク
「空間設計」には一級建築士、建築構造士、建築設備士、電機設備士、積算資格士やCADオペレーター、インテリアプランナーなどさまざまな人がいます。この人たちがチームを組んで設計や監理にあたったのです。
疑問?質問
「空間設計」では「ワイルドブルー ヨコハマ」のほか、世界一の室内人工スキー場、ディズニーランドなど大きな建築物をたくさん手がけています。みなさんに仕事について詳しく聞いてみました。
Q.及川社長はどのようにして、建物のイメージを思い浮かべるのですか?
A.調査の段階で「この土地にはこんな建物が似合いそうだなあ」と直感でイメージがわくことが多いです。
Q.「伝説のラストウェーブ」のような具体的なイメージはどれくらいかかって考えつくのですか?
A.およそ1週間、おふろに入っているときでも1日じゅうずっと頭の中で考えています。すると、だんだんとアイディアが凝縮されてきて、からまっていた糸がぽろりとほどけるようにイメージがかたまって出てきます。頭に浮かんだイメージをイラストにするときは熱中して徹夜で書き上げます。
Q.設計図をかくまでに何度も模型をつくりますね?
A.イラストに起こしたものを模型にして、頭の中にあったり絵に描いたイメージが実際に出来上がったときにどう見えるかを確認していきます。
Q.建築設備士さんはどんなお仕事をしているのですか?
A.たくさんの人がはいる建物では、冷暖房や換気の設備が必要となります。この部屋にはどれくらいの機械が必要か、などを考えます。また万が一火事などが起こった場合、どのような消火活動をするのか、消防隊がどこから救助をするのか、なども考えます。
Q.建物設計だけでなく、内部にもいろいろな工夫がされていますね。
A.建物だけでなくあらゆる部分の設計をしています。例えば、レストランで使う食器やはしおき、従業員の制服などもデザインし、全体をとおして一つのイメージをつくりだします。
Q.CADでは何ができるのですか?
A.コンピューターで簡単に線が引けます。複雑な計算も自動的にできます。左右対称の建物の図面は、片側の半分だけ作って残り半分は反転複写すると全体の図面が完成します。また一つの図面を建築、構造、電機、設備それぞれで共有できて便利です。 |